サケ回帰向上を復興の「シンボル」に
【新刊紹介】上田宏氏編著「三陸のサケ」
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター・大学院環境科学院教授でサケ・マス類など産卵回帰性魚類研究の第一人者・上田宏氏編著の「三陸のサケ―復興のシンボル」がこのほど北海道大学出版会から発売された。
古くからシロザケやサクラマスなどのサケ漁業が盛んに行われたきた三陸沿岸地域は現在、震災被害に伴う来遊の低迷に加えて震災前から続く回帰の減少傾向にあるなど、その原因究明と回帰率の向上が望まれる情勢にある。
一方、同エリアが未来型産業のモデル地域として再生することを目的に科学技術振興機構(JST)が「水産加工サプライチェーン復興に向けた革新的基盤技術の創出」に関する基盤研究を公募。本書は三陸地方のサケ(シロザケ・サクラマス)親魚の回帰率を向上させることが三陸復興のシンボルとなると考え、「産学共創の場」における地元サケ関係者からの要望を加味した「東北地方の高回帰性サケ創出プロジェクト」を提案した研究成果を集約したものとなっている。
豪華執筆陣が最新の研究成果を紹介
岩手県のサケ漁業関係者および様々な分野のサケ研究者を中心に三陸沿岸のサケ漁業および高回帰性サケを創出するために行っている技術開発・試験研究について紹介。日本のサケ・マス研究の最前線に立つ総勢15人の研究者が執筆に当たっており、増養殖技術や母川回帰性に関する生理学、遺伝子研究から加工流通に至るまで様々な角度からスポットを当てている。三陸にとどまらず全般的なサケの不安定な来遊が続く昨今、貴重な研究成果が凝縮した一冊となっている。
A5判、208ページ、2200円(税別)、好評発売中。北海道大学出版会のホームページからも購入が可能。